29 April, 2006

14th スズキメソード世界大会

つい先日、イタリアのトリノで行われた、第14回スズキメソード世界大会を少し見学することができたので、ここに簡単な感想(というか日記に近い…)を書いておきます。ちなみにスズキメソードとは…、僕がこんなブログまで作るようになったのも元はといえばスズキメソードがあったからで。ひと言でいえば鈴木鎮一先生が創めた「母語教育法」の理念に基いた幼児からの音楽教育法となりそうですが、ただでさえ長いのに、ここで説明しだすと終わらない為、詳しくは下記リンクへどうぞ。

着いたその日、駅を出てすぐに楽器を持って異常に大きな名札を首から下げた子供たちを見かけた。雰囲気は何となく前回の松本大会と同じ、懐かしい。大会の本部まで行くと凄い状態。値段もカサも高くて、大仰な割に中身がえらく簡素と不評だった「スズキ・ランチボックス」を開く人々、楽器を裸で持って駆け回る子供達、右往左往するスタッフ。そこで自分もすごーく高価な名札を購入、何のことはない、単なる通行手形。


大会プログラムでピアノのファイナルコンサートとやらを見つけ、ピアノの本拠、ベルディ音楽院へ。少し時間があったので名札を胸に校内散策。素晴らしい、各教室にピアノが、そして所々から聴き慣れたメロディーが流れてくる。松本のあがたの森を思わせる、というかトリノに来る前から頭の中にはあがたの森が…。階段を上がって見つけた角のとある教室(写真)、かなり年季の入ったスタインウェイのフルコンサートがあった。見た目同様、凄く年季の入った音、力強い低音、ビックリするほど音の出る高音。ただバラバラで、いい意味でも悪い意味でも整ってない。でもかえって趣があってよかった。こんな場所を求めて来たといっても過言ではない。少し遊ぶ、満足、もう帰ってもいい気になった。
その後、幸運にもお目にかかれるとは思ってなかった日本のピアノの先生方に遭遇しておしゃべり。

そしてようやくファイナルコンサート。ベルディ音楽院のホール(写真)、こじんまりしたホールだったが音響が素晴らしかった。そしてコンサートはそれ以上の素晴らしさ、これこそスズキだと思えるような演奏の数々。特に若干10才で、ペダルに爪先が届くか届かないかの状態でショパンのバラード3番を弾きこなし、天井向いてピアニッシモを弾かれた時には、正直ため息しか出てこなかった。その子が日本人だったのはちょっと嬉しかった。もっともピアノは日本が一番盛んなのかもしれないけど…シカゴから来た先生もピアノの教師がいないと嘆いていたし。


その夜、ガラコンサートⅡというのを聴くことができた。ガラはちゃんと取るもの取ってチケット買わせる。2度目のガラの場所はオーディトリアムRAI(写真)というところで、ここもなかなか綺麗なホール。プログラムはほとんどが協奏曲で、地元のプロのオーケストラとスズキチルドレンの代表たちとのコラボレーション。マンドリン、ギター、チェロ、ビオラ、バイオリン、ハープ、ピアノと楽器も多彩。ちなみにピアノは(もちろん)モーツァルトの戴冠式だった。小さな、歳に似合わない演奏をする子供達をソリストに迎えて、特に同じ楽器を弾くオケの団員達が明らかに意識してプロの意地を前面に出しているのにはかなり笑えた。演奏も素晴らしかったし、次々と色々な楽器の曲を聴けてとても面白かった。

少し脱線。次の日の夕刻、当てもなく行き先もよく分からない路線バスで街を彷徨っている最中、2人連れの日本人にバスの中でばったり会った。成り行きで夕飯をご一緒することになり、よく話を聞いてみればお二人はスズキのチェロの先生と、同じくチェロでマスタークラスに参加している生徒さん。このお二人がなんとも愉快な人たちで、イースター休みでもやっている数少ないレストランに入って、思いもよらず延々と、そして楽しい夕食のひと時を過ごすことができた。2人のチェロを聴けなかったのだけが心残り。それにしても偶然というものは時に恐ろしいけれど、いや面白い。

最終日(正確にはその前日から)、街中からはほぼ全てを引払い、大会本部は少し郊外のフェアウェルコンサート会場となるパラスポルト(写真)に移った(…と旧本部に行ったら言われた)。ここはつい2ヶ月前の冬季五輪ではアイスホッケーの会場だったらしい。よくまあこんなに武道館に似た造りのとこを見つけたもんだと感心してしまった。ということで形式的にも日本の全国大会と似ていた。違いはギターやハープ、マンドリンや声楽があること。さらに何と、ピアノが電子ピアノだったこと。いかにピアノの生徒が少数派だとはいえ、電子ピアノはちょっとかわいそうに思えた。さらに電子ピアノでさえ結構かさ張るから置ける台数は知れている。あぶれたピアノ科の子供たちは代わりに踊らされていた…。まあ踊りも悪いとは言わないけどピアニカくらい持たせてあげればいいのに、とか思った。

鈴木先生の言葉の一つ、写真の一枚でも掲げてほしかったというような細かい事はさて置き、フェアウェルコンサートはやはり素晴らしかった。いつも最後はキラキラ星の大合奏と決まってるけれど、やっぱりこれがいい。どの国の人でも、どの楽器でも、どのレベルでも、スズキメソードならこの曲でひとつになれる。キラキラ星に皆が満足して大会は幕を閉じた。

今回、行くのが遅すぎてレッスンを見学できなかったのは残念だったが、トリノという町自体もとても魅力的だったし(別ブログ)、多くの素晴らしい演奏を聴いていろんな人に会い、鈴木先生が亡くなられてからも、スズキメソードは世界中で確実に受け継がれているということを実感することができた。半ば無理矢理なスケジュールだったが、少しでも覗けてよかったと思う。


スズキメソードについて:
http://www.suzukimethod.or.jp/02/idea.html
Eric Fandrichさんの鈴木鎮一先生追悼ページ:http://mrdata.com/fandrich/eric/suzuki/front.j.html

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